aloha_mode2007-06-13


ハワイで今秋から、カイウラニ王女の映画の撮影がスタートします。


監督はイギリス人のMarc Forby。自身もハワイ出身の女性と結婚しているフォービー監督は、数年前にイオラニ宮殿を訪れ、カイウラニの写真を見た。その時インスピレーションを受けて、何年もカイウラニについてハワイ、そして王女が8年を過ごしたイギリスでリサーチを重ね、カイウラニの目から見たハワイ王朝の最後を映画にしようと決心したそう。


主役をつとめるのは、ハワイ育ちのペルー系アメリカ人、Q'orianka Kilcher。カイウラニの少女時代は、オアフ在住ハワイ系の血をひく12歳のKaimana Pa'aluhiが演じます。


クォリアンカは2005年に映画「The New World」でポカホンタスを演じ注目された、現在17歳の女優。カイウラニ王女の役をつとめるのに、ハワイの血をまったくひいていないということで、このキャスティングについてハワイアンコミュニティでは大きな波紋が広がっている模様。


おそらくそうした反応も予想してか、12歳のカイマナは、まったく演技経験がないものの、逆にハワイアンの血を引いているということが有力な要素となってキャスティングされています。


今回の映画は低予算のインディペンデント作品ですが、カイウラニの生涯とハワイの歴史を描きたいと願った監督が、多くの歴史研究家やハワイ語専門家のサポートを受けた上で、自らシナリオを書き、長年かけてようやく製作にこぎつけた映画なので、ネイティブハワイアンの人たちも、もっとサポートしてくれればいいのにと思わずにはいられません。


ハワイ人が映画製作に関わることも大切ですが、こうした映画が作られ、歴史が語られることのほうがもっと重要なのではないかと思います。(皆がそうではないですが、ネイティブハワイアンの活動家の人の中には、とても閉鎖的な人もいるので…)




カイウラニ王女
(Victoria Ka'iulani Kalaninuiahilapalapa Kawekiui Lunalilo。Ka'iulaniはハワイ語で天国のもっとも高いところという意味)


1875年10月16日生まれ。ハワイ人とスコットランド系の間に生まれ、1899年に友人の結婚式のために訪れていたハワイ島で乗馬中に大雨に打たれ風邪をひき、それがもとで3月6日、23歳の若さで死去。


カイウラニはカラーカウア王の時代、ワイキキ近くの広大な邸宅アーイナハウで幸せな少女時代を過ごすが12歳の時に母が死去。13歳の時にハワイを離れ、教育のためにイギリスに留学。1891年にカラーカウア王がなくなり、リリウオカラーニが王位を継いだ時、カイウラニは王位継承者として任命された。


1893年18歳の時ハワイ革命が起こると、カイウラニはイギリスからワシントンDCへ出向き、クリーブランド大統領にハワイ王朝の存続を懇願。クリーブランド大統領は、助けになることを約束してくれたが、議会がそれを許さず、彼女の願いもむなしくハワイ王朝は滅亡の一途をたどった。


カイウラニは1897年までヨーロッパに滞在。ハワイに戻ってきた時にはすでにリリウオカラーニはイオラニ宮殿に幽閉、王座を退かされていた。ハワイ王朝の終焉、そして親しい友人の死なども重なり、悲しみが若き王女の死を早めたのではという人もいる。


ちなみにカラーカウア王が日本を訪れた時(1881年)、日本の協力を得ようとして、天皇家山階宮定麿王とカイウラニとの縁談の話をもってきたのは有名な話。1894年にリリウオカラーニがカイウラニに3人の王子の中から結婚相手を選ぶようにと書面で連絡してきた時には、カイウラニ自身が「愛していない人とは結婚できない」と回答したそうです(イギリス滞在中に隠れたロマンスがあったのか想像してしまいます。でも王女は独身のまま亡くなりました)。


また、ハワイでレイに使う花として人気の高いピカケ(ジャスミン)は、ハワイ語でピーコック(孔雀)の意味。カイウラニがこの花と孔雀を共に愛していたから同じ名前になったのだそうです。カイウラニがイギリスに留学する前、「宝島」などで有名なイギリスの作家、スティーブンソンがハワイに滞在しており、カイウラニの話し相手としてたびたびアーイナハウを訪れていたという話もあります。スティーブンソンは父と同じスコットランド出身なので、母を失ったばかりのカイウラニはどれだけ慰められたでしょうか。


ワイキキにはプリンセスカイウラニホテルというのがありますが、このホテルはカイウラニが少女時代を過ごしたアーイナハウの近くにあるため、この名がつけられたようです。


私も以前から、この美しいハワイ最後のプリンセスについてもっと知りたいと思っていたので、この映画の公開が楽しみです(2008年終わり頃公開予定)。




●参考サイト
ホノルルアドバタイザー
HANAHOU


http://www.electricscotland.com/history/women/wh36.htm
(イギリス時代のカイウラニについて詳しい)


PHOTO(C)Princess Kaiulani: Hawai'i State Archives