以前お伝えした写真家キム・テイラー・リースKim Taylor Reece)関連の裁判の続報です。


フラカヒコのポーズをテーマとした写真の著作権問題で、カイルアのギャラリーオーナーを相手に裁判をおこしていた写真家のキム・テイラー・リース氏が、12月22日に出された第1回目の判決では訴えをしりぞけられ、事実上「負け」となりました。


シーブライト判事の判断では「ギャラリーに掲げられたステンドグラス作品と、リースの写真作品では、いずれもフラのポーズが描かれている。これは古典的なポーズであり、パブリックドメイン(公有財産)となるため著作権は適用されない」とのこと。


しかしこの判決をテーラー氏は不服としており、「今回はまだすべての証拠を提出していない。次の公判では、すべて提出する。そうすれば逆転勝訴できるだろう」と上告する構えを見せています。


問題となっているのは、テーラー氏の写真作品「Makanani」と、ネイティブハワイアンのアーティスト、コルッチィさんの作成したステンドグラス作品。これらは一見、非常によく似ています。


しかし両作品で描かれているのは、フラカヒコの'ike(ハワイ語で「見る」の意味)のポーズ。またカヒコではマイレのレイをダンサーが身に付けるのはとても一般的なことであり、テーラー氏でなくてもフラカヒコを知っている人であれば、誰でも思いつくであろうポーズというのも事実です。


テーラー氏が写真を撮影したのは1988年で、コルッチィさんがステンドグラス作品を作ったのは1998年。コルッチィさんは、姪がこのポーズをしている写真を見て、インスピレーションを受けたとしており、リース氏の写真をもとに作成したものではないと明言しています。ちなみにコルッチィさん自身も、高名なクムフラ、マプアナ・デ・シルヴァのもとでフラカヒコを学んでおり、今回マプアナ、そしてヴィッキー・ホルト・タカミネというハワイのフラ界を代表するような大御所のクムフラたちもコルッチィさんを支持していました。


古代ハワイ人が生み出し、代々フラダンサーの間で受け継がれてきた古典的なアートを、なぜ現代の一アーティストが、ただ写真を撮影したというだけで、ポーズそのものの著作権を独り占めできるのか、ということでハワイ内外のフラダンサー、クムフラたち、そしてフラをテーマとした作品作りをしている多くのアーティストたちがこの裁判の行方を注目していました。


このカイルアのギャラリーは、あのマヌヘアリイ(フラガール御用達ブランド)の隣にある店で、裁判中は暫定措置としてこのステンドグラス作品はディスプレイ禁止となっていたのですが、これで晴れて飾ることができるようになりました。


●ひとこと
私はもともとテーラー氏の作品は、あまりにきれいすぎるのと、あまりに商業的すぎるのとで実はさほど好きではなかったのですが、話し合いで解決せずに裁判に持ち込んだということで、ちょっと印象が悪くなってしまいました。でも周りに彼のファンは多く、フラ仲間の中でもテーラー氏を支持している人も少数派ながらいます。その中には、ネイティブハワイアンの人もいるんですよね。最終的な結果はどうであれ、フラをめぐって争いがおこるのは残念なことです。


参考サイト(一部)
http://www.honoluluadvertiser.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20061223/NEWS23/612230325/1001/NEWS

http://starbulletin.com/2006/12/23/news/story07.html