「2つの祖国」を読んで。その2


あまりに衝撃的な話だったので、
いまだにいろいろ引きずってしまう私。
その後、いろいろ調べてみたら、
主人公の天羽賢治には、モデルが
いたとか。ただし、強制収容所
入れられ、日本語教師を務めた後に
裁判でリードモニターを務めた
というところまでは同じだけれど、
あくまでモデルというだけで、人物像
などその他は作者の創作だそう。

ちなみにこの本がドラマ化され、アメリカの
ケーブル局でも放送が予定されていたものの、
日系アメリカ人たちの猛反対にあったらしい(特にハワイ地域)。
というのは、戦後せっかく「アメリカ人」
として認められてきたところで、「日系アメリカ人は
日本をひきずっている、彼らにとってアメリカは忠誠を誓うべき
唯一の祖国ではない…」と思われるような内容のドラマを
放映したら、せっかく勝ち取った「今」が
崩れてしまうと懸念した二世たちが多かったらしい。
このドラマが作られたのは80年代。
戦後何十年もたっていたものの、
デリケートな話題であったのは間違いないようだ。

また、ドラマに出てくる二世が「実際の二世とは違う」
という反発も大きかったらしい。
以前、ソーテルに住む日系のおじいさんの中に
あのドラマにエキストラとして出たことがある
という人がいたが、一部ロケはロサンゼルスで
行われたものの、日本人と日系人の間に感覚の
ズレがあったのかもしれない。
ちなみに小説の中では、ソーテルはイースト・ロサンゼルス
として描かれているが、実際はウエスト・ロサンゼルスだ。
小さな間違いかもしれないが、かなりの取材期間を
費やしたとしても、やっぱりこのような間違いが
随所にあったのかもしれない。

ロサンゼルスには多くの日系人が住んでおり、何人か
知り合いもいるが、3世、4世になると日本語が話せない
人が非常に多い。韓国、中国、メキシコ系などの移民と
比較しても、日系の移民の場合は完全にアメリカ化している
割合が大きい。
これまで「なぜ?」と疑問に感じていたが、本を読んで
なんだか納得した気がする。
日本人というだけで、アメリカで生まれてもこれだけ
差別されてきた歴史を考えれば、できる限り祖国を忘れ、
アメリカ人になりきる努力をせざるをえなかった歴史的背景が
おのずと浮かび上がってくる。