二つの祖国を読み終えて

昔から日系人の話って興味あったのと、50年代の
ロサンゼルスが舞台ってことで、読んでみた「二つの祖国」(山崎豊子)。
昨日読み終えてみて、暗ーい気持ちになって
しまいました。

舞台は、リトルトーキョー
日系移民としてアメリカに渡り、苦労の末
ようやくクリーニング店を開業し、仕事も軌道にのった天羽一家。
そんな矢先にパールハーバー奇襲事件が起こり、
アメリカ国籍を持つ二世たちもろとも、強制収容所
入れられてしまう。長男の新聞記者、賢治はアメリカ軍に
入隊し、日本語指導教官を務めることになる。

後に彼は日本軍の暗号を傍受する任務や、投降を呼びかける
日本語のビラを作成する仕事をするようになるが、
なんと戦地となったフィリピンで、そのビラを受け取った
日本軍の兵士の一人が、戦争勃発前に日本で教育を受け
そのまま徴兵されていた弟の忠だった...


という話。戦争に運命を翻弄される家族の話に、賢治
となぎ子という女性のラブストーリーがからみ、ほんと
壮大なスケールのお話でした。

で、なにが暗い気持ちになったかというと、この本は
上・中・下と分厚い3巻になってるのですが、上巻は
家族の話が中心になっているのに、中巻からは
いきなり舞台が日本に飛び、戦後の東京裁判
話がえんえんと続くのである(賢治はモニターとして
裁判の訳語をチェックする仕事に就くという設定)。

で、その中にかの南京大虐殺の話が出てきたり、
また賢治の恋人のなぎ子が広島で原爆にあい、
最初は無傷と思ったものの、数年後原爆病で徐々に
臓器をおかされていき、亡くなる話などが出てきて
もうほんと暗ーいのである。

ちなみに賢治は、親の薦めで同じ二世の女性と結婚し、
夫婦仲が悪いものの、子供をもうけていたため
離婚できず、そのためになぎ子とは愛し合いながらも
苦しい立場に立たされ、愛も実らずじまい。
そして日本のためにと思って、引き受けた
モニターの仕事も、戦勝国が一方的な見解のもと
敗戦国を裁くものでしかなかったという現実。

というわけで、最初は大昔、子供の頃に見たNHK大河ドラマ
のイメージで(賢治役に松本幸四郎、治訳に西田敏行
なんとなく読み進んでいったら、なんと
すごい話だったというわけです。
日本の暗黒時代が非常によく描かれているのだけれど、
裁判の様子があまりにもこと細かく書かれていて、
正直いって「え?物語はどこにいったの?」
と思ってしまいました。

強制収容所の話はたくさんあるけれど、その後どのようにして
「今」があるか、っていうことの方に私は興味があるので、
そういう本をご存知の人がいたら、ぜひ教えてください。

はー久々の長文疲れたー。