ベジタリアンという人々


はじめて私がホンモノのベジタリアンに出会ったのは、
神田のフォトスタジオで広告カメラマンのアシスタントとして
働いていた時のことだ。この時の話はいつかまた詳しく
話すとして、とあるカタログのロケで静岡の工場に
ニュージーランド人のデザイナーが同行することになった。
当時私がついていたカメラマンの仕事ではなかったが、
他に英語ができるひとがいないというので、アシスタントの
仕事が私にまわってきた。

で、2泊3日のロケで何度も食事を共にし、ベジタリアンについて
詳しく知ることとなった。

彼がなぜベジタリアンになったのかは忘れてしまったが、彼は
ベジタリアンの中でも最も筋金入りの「Vegan」という種類に
属する人々だった。普通のベジタリアンは健康上の理由や、ただ
単に動物好きだという理由などで、本当は肉を食べられるけれど、
なるべく肉を食べないようにしている程度の人も含まれる。肉は
食べないが、牛乳などはOKというのが、ごく普通のベジタリアンだ。

しかし、このVeganという種類の人々は牛乳はもちろんバターもダメ。
卵なんてもってのほか。そしてレザージャケットはいうまでもなく、
革が少しでも使われた製品を身につけることさえも拒否する人々だ。

となると、おのずと食べられるものも非常に限られている。
ベジタリアンカレーなんて銘打ってあるカレーも、少しでもクリームや
バターが入っていたらダメ。ベジタブルスープも、コンソメを使って
いたらダメ。とすべてがダメダメづくし。

こうなると、外食はほとんど不可なのである。

さて、このロケの間、デザイナー=クライアントというわけで
本来は接待をすべきなのだが、これがまったく不可能だった。
魚どころの静岡で、魚はダメ、寿司もダメ、茶碗蒸もダメ、揚げ物も
ダメ。これならと思って頼んだ、ほうれんそうの炒め物もバターが
入っていたのでダメ。

というわけで、結局2泊3日の間、彼がくちにしたのはわずかの
ナッツ類となにもかけない白ご飯。(ダシが入ってるので、味噌汁もダメ)
そしてコーヒーだけだった。

私にとっても、カメラマンともう一人の専属のアシスタントにしても、
こういう人種との付き合いははじめてのことだったので、最初は非常に気を使
ったものの、結局は「もうあきらめて」好きなものを食べさせてもらうほかなかった。
その後、何人かベジタリアンの知り合いができたが、彼ほど徹底していた人
はいなかったので、何年もたった今も彼のことは非常に強い記憶として残って
いる。

ちなみになぜこの話になったかというと、昨日ウエストウッドのベジタリアン
ストランに行ったから。アメリカ、特にロサンゼルスでは主に健康上の理由か
ベジタリアン、もしくは半ベジタリアンの人が多いので、こうしたビジネスが
成り立ち、数はそれほど多くはないがベジタリアンレストランもあちこちに点在
している。またグルメフードストアに行けば、ベジタリアン専用の大豆でできた
ソーセージなどが各種売られているので、誰でもすぐににわかベジタリアン
なることができる。

ベジタリアンネタで盛り上がった(?)ところで、そのレストランを紹介。
名前はnative foods。パームスプリングス発のレストランで、ロサンゼルスで
はUCLAのお膝元、ウエストウッドビレッジに店を構える。オーナーは、ベジタ
リアン向けのクッキングブックの著者で、その筋ではよく知られる存在のよう。

テンペと呼ばれるインドネシア生まれの大豆をかためたものが肉の代用食と
してここではよく使われており、豆、穀物、海草、米などを使った料理がある。
BBQソースやスパイスなどに工夫がされており、ベジタリアン料理なんて味
気ない!と文句をいいそうな肉好きの人にも「意外にイケる味」として好評。

native foods
310-209-1055
1110 1/2 Gayley Ave., Westwood, CA
http://www.nativefoods.com/home.html

http://www.nativefoods.com/home.html