ハワイの土地をめぐって


2月末、フラ関連のアメリカ人の友人の間で、ある政治的事柄に関するメールが飛び交いました。
それは「Ceded Land(譲渡地)」として知られる、ハワイの土地に関するもので、最初はなんのことだかあまり良く分からなかったのですが、少し調べてみて、これはかなり大事だと気付きました。


このブログを時々読んでくださっている方はご存知かもしれませんが、私はハワイが好きで、最初は自分が習っているフラのことを中心に書いてきたのですが、いつの間にか、ハワイで起こっている社会的出来事などを書くことが多くなってしまいました。特にフラやハワイ語を習っている関係で、ネイティブハワイアンの血をひく知り合いが多く、どうしても、先住民の問題には無関心でいられません。


今回は、この「Ceded Land(譲渡地)」について書いてみようと思います。


皆さんご存知のように、今、アメリカ合衆国の1州であるハワイは、もともと「ハワイ王国」という独立した国でした。しかし、19世紀中ごろから白人による経済的、政治的介入が始まり、リリウオカラニ女王の時代に王国は転覆。白人支配による一時的な「ハワイ共和国」を経て、その後アメリカ合衆国下の「ハワイ準州」の時代がはじまります。


これはいわば、国による国の"のっとり"なのですが、この一連の出来事が起こった際、もともと王族やハワイ王国が所有していた土地が奪われ、白人たちの興した政府に強制的に譲渡。その後、ハワイが州に昇格した時に、ハワイ州の管理下に置かれることになります。
といっても、これで土地が正式にハワイ州のものになったわけではありませんでした。土地は信託扱いとなり、ハワイ先住民と一般市民の二者を受益者とし、公立校と公的教育機関へのサポート、その他の公的事業などのために土地のリースをすることで、州の財源としてきました。


しかし、1994年に州政府がその土地の一部を転売しようとしたことで、事態は急変。
ハワイ先住民の団体、OHAがそれを差し止めるための訴えを起こします。
巡回裁判所では、州側の勝利でしたが、後に最高裁判所では先の決定はくつがえされ、原告の訴え通り、被告であるハワイ州が土地を売却できないよう差し止め命令が下されました。


これに対し、ハワイ州側は、アメリカ本土の最高裁判所に上訴し、2009年2月25日に首都のワシントンで
第一回の口頭弁論が行われたのです。


問題となっているのは、実にハワイ州全土の4分の1にあたる、120万エーカーの土地です。
この歴史的背景を見ていくと、もともとハワイ人のものであった土地をハワイ人に返すのは当たり前のような気がするのですが、100年の間に移民が増えたり、混血が進んでしまったせいで、「誰がハワイ人か?」ということもあいまいになったり、州の人口に対する「ハワイ人」の割合が減り、権利を主張できる人が激減し、人口の大多数を占める、非ハワイ人の公的利益が優先されている現実もあり、非常に難しい問題となっています。


州側としては、もし土地を一部でも売ることができれば、ハワイ人、非ハワイ人に限らずハワイ州の多くの人のためにもっと役立てることができるというのが主旨なのでしょうが、ハワイ人の側からしてみれば、「先祖の土地をこれ以上失いたくない」というのも最もな主張です。ハワイ人団体はOHAのメンバーを中心に、各地で運動を行っていますが、非ハワイ人の団体も「ハワイ人だけを優遇するのはおかしい。人種に限らず、すべての市民を平等に。Aloha to ALL」と主張しています。


もしこれが100年前であったなら、この土地は明らかにハワイ人のものであり、「譲渡」は不法以外の何ものでもありません。
しかし、当時はそれを阻止することはできませんでした。
そのまま100年が過ぎ去った今、「誰がハワイ人か?」ということも含め、問題はかなり複雑になっています。

今回の裁判は「この土地は誰のものか?」という究極のところで戦っているのではなく、問題が解説していないままで土地を売却しようとしているハワイ州の動きを阻止するのがOHAの目的です。
今後の動きが気になります。


http://en.wikipedia.org/wiki/Ceded_lands

http://www.kuikapono.org/