ピクチャーブライド

aloha_mode2006-01-06




LAの日系新聞の「2005年に亡くなった著名人」の欄を見ていて、ハワイ日系移民を題材にした映画「ピクチャーブライド」(1994)の女流監督カヨ・ハッタさんが47才という若さで亡くなっていたのを知った。
以前から見よう、見ようと思いながらそのままにしていた映画を今日ようやく見た。

■ピクチャーブライド■
あらすじ
写真1枚と手紙を交わしただけで、海を渡ってはるばるハワイへやってきた16歳の花嫁リヨ(工藤夕貴)。しかし波止場に現れた夫は写真よりはるかに年を取った中年の男だった。騙されたという思いが消えないリヨは、お金を貯めて日本に帰ることだけを夢見、夫ともなじまないまま、ただひたすら働きつづける。そんな彼女がハワイの地に根付いていくまでの姿を描く。

海外では日本のお見合いの習慣すら「非人間的」という声が聞かれるのに、会った事もない相手と結婚するために外国までやってくる「写真花嫁」という20世紀初頭の日系移民の習慣は、ものすごく奇異にうつったという。


この「写真花嫁」は、独身男性ばかりが多かった移民の渡航先では、男性たちが結婚するための苦肉の策だったという。貧しい日本の農村を出て、海外で一旗揚げようと、身ひとつでやってきた彼ら。しかし、実際には"数年働いたら大金持ちになって、故郷に錦を飾れる…”という政府や移民斡旋業者の宣伝文句は真っ赤な嘘で、結婚するために日本を往復するお金はもちろん、自分が帰国するためのお金すら稼ぐことができず、ただひたすら汗水たらして過酷な労働に耐え、いつか故郷へ戻ることを夢見るだけの毎日だった。


そんな中で、花嫁の片道の渡航費用と、紹介者への謝礼のみですむ写真花嫁という習慣が生まれ、多くの女性たちがハワイ、そしてアメリカ本土へと渡った。しかし、写真だけのお見合いで一度も会わずに結婚を決めてしまうため、少しでも女性に好かれようと、男性たちはハンサムな友人の写真を使ったり、何十年も前の若い頃の写真を使ったりして、実際の自分とはかけ離れた写真を日本に送った男性も多数いた。波止場で初めてお互いが顔を合わせ、その瞬間から夫婦となる。しかし中には、自分の「夫」を受け入れられず、時を見計らって逃亡したり、他の男性と駆け落ちするなどの事件も多発したという。


監督のカヨ・ハッタさんは、ハワイ生まれの日系3世。DVDに最近のインタビューが入っていたのですが、それによると、最初は30分ほどの短編と思って作り始めた作品が、いろいろな人の支援で資金が集まり、長編映画を作ることになったそう。この映画の最後には、かつて見たことがないくらいたくさんの名前が「スペシャルサンクス」としてクレジットされている。インタビューの中に、完成した映画を見るために高齢の日系女性たちが杖をついたり、歩行器につかまって歩きながら、「自分たちの歴史」を描いた映画を見に行く場面があり、実はその場面が一番泣けた。彼女たちは、波止場で写真と相手を見比べて、主人公工藤夕貴が「え、ちがう!」という顔をしたシーンで、くすくす笑っていたそうです。


この作品、実は三船敏郎の遺作でもあるそう。耕地の移動映画館の弁士として登場しています。また海辺のシーンで主人公がハワイアンの漁師と出会うシーンがあり、ここにミュージシャンで、テレビなどにも多く俳優として参加しているモエ・ケアレが出演。ハワイ語の曲を歌っています。歌声がIZに似てるなぁと思っていたら、なんと親戚だったそう(これは今回初めて知った)。重いテーマを扱った作品ではありますが、ハワイの緑と、さとうきび畑の赤土のコントラストが非常に美しい映画です。ぜひ機会があったらレンタルなどして見てみてください。


●USA在住の方へ
カヨ・ハッタさんの遺作となったのは、再びハワイが舞台の「フィッシュボウル」という作品。日系女性作家ロイス・アン ヤマナカ の「ワイルド・ミートとブリー・バーガー」という小説の中から3つの短編を合わせたもの。今年春にPBSで放映が決定しています。ぜひこちらもチェック!






ピクチャーブライド
ピクチャーブライドリサ・オノデラ ダイアン・メイ・リン・マーク カヨ・マタノ・ハッタ

ビクターエンタテインメント 2000-11-22
売り上げランキング : 47,466

おすすめ平均 star
star美しい日本女性の物語
starハワイの日本人の歴史を知るきっかけに。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools