マナの宿る骨の行方

aloha_mode2005-12-29



ネイティブハワイアンたちの間で、今、大きな問題となっていることがある。ことの発端となったのは、2000年、Hui Malamaというネイティブハワイアンのグループが、ビショップ博物館から、祖先の骨(na iwi kupuna・ナー・イヴィ・クープナ)を含む83点の物品を借りたこと。


1年間という期限付きだったため、2001年には物品を返却しなければならなかったのだが、このグループは結局返却をせず、物品が最初に発掘された、ハワイ島のカヴァイハエ洞窟群の2ヶ所に埋めたといわれている。Hui Malamaは、その事実は認めているが、具体的な場所については一切公表していない。


このことに腹を立てたのが、他の13のハワイアンのグループで、そのうち2つの団体が、今年8月、Hui Malamaを相手取って訴訟を起こした。しかし、度重なる返却命令を無視したことで、12月に入り、グループのリーダー、エドワード・ハレアロハ・アヤウ(Edward Halealoha Ayau)がついに逮捕されてしまう。


ネイティブハワイアンは、骨にはマナが宿っており、それはもともと埋められた場所に戻されるべきと考えている人が多い。しかし、ハワイ内でも各グループによって考え方が異なり、たとえばKekumano 'Ohanaというグループのサイ・カムエラ・ハリスは、Hui Malamaの取った行動を「ハワイ人全体の代表でもないのに勝手なことをすべきでなかった」と強く非難し
ている。


Hui Malama側は、83点の品々は埋葬品であり、1905年に西洋人たちによって勝手に洞窟から持ち去られ、いわば盗まれたものであるから、もとのところに戻すべきと言っている。


しかし他のグループは、物品は埋葬物ではなく、一般的な宗教的アイテムで、キリスト教布教の影響で、野蛮な道具として廃棄させられるのを防ぐために、一時的に洞窟に隠された品物であるから、洞窟に戻されるのは間違っていると主張。


裁判では、Hui Malama以外のハワイアングループにも公平に物品の鑑定をさせるため、再度発掘を行い、裁判の場に提出するよう求められていたが、Hui Malama側はそれを受け付けず、逮捕にいたった。


裁判の席には、Hui Malamaの理事の一人である、プアラニ・カナヘレ(ハラウ・オ・ケクヒのクムフラ)が出席していたが、裁判官がアヤウの投獄を言い渡した瞬間、怒りのあまり立ち上がり、王族の末裔である、訴訟人の一人、アビゲイル・カヴァナナコアをののしる言葉を残してその場を後にしたという。


●Hui Malama Na Kupuna O Hawai'i Nei(被告側)
1989年に、博物館と建設現場からネイティブハワイアンの骨を守るために作られた非営利団体


●訴えた団体(訴訟人)

Royal Academy of Traditional Arts(代表La'akea Suganuma)
Na Lei Alii Kawananakoa(代表Abigail Kawananakoa 王族の末裔の方です)


●83点の物品

人骨の他、人毛のかつら、人の歯のついた入れ物などが含まれるそうです。


ひとこと
最初この事件について知った時は、単純に「ハワイ人の骨は元のところに戻すべき。展示品として博物館におさめるのは正しくない」と思ったのですが、連日の報道を見て、さまざまな人の意見を読んでいるうちに、ことの複雑さを知りました。この発掘品に関しては、複数の団体が、博物館に対して「返してほしい」と交渉を進めており、その中でどうやらHui Malamaが先走って、洞窟に持っていってしまったようなのです。


ハワイには、ho'oponoponoという、話し合いで解決を試みようという昔からの知恵にのっとったしきたりがあるのですが、ネイティブハワイアン同士での話し合いでは解決できず、「法律」という西洋式解決法に頼らざるを得なくなってしまったということ、そして今回の争いが、ハワイ人対ハワイ人
の争いであるということで、心を痛めている人が多いです。この裁判、今後どうなるのでしょうか。

◎写真は、Starbulletin.comより