紅葉を見に…

あらいぐまラスカル〈1〉ぼくのあたらしいともだち紅葉真っ盛りのアメリカ中西部を旅してきました。
私が住んでいるロサンゼルスでは、季節の変わり目が日本ほど顕著ではなく、感じとして夏と冬しかないようなところです。冬になっても昼間はTシャツ1枚で過ごせるくらい暖かい日が多く、そもそも落葉樹がほとんど道端に植えられていないため、紅葉を見ることも稀です。


アメリカ映画で中西部や東海岸の田舎の美しい秋の風景などが出てくるたびに、一度紅葉の季節に旅してみたいと思っていたのですが、ようやく念願かなって10月に旅行に出ることができました。


行って来たのはウィスコンシン州。「America's Dairyland(アメリカの酪農地帯)」というのが州のキャッチフレーズで、ウィスコンシン州をドライブしていると、大きな町以外はどこでも牛、牛、牛のオンパレード。全米で最もチーズの生産量が多く、新鮮な牛乳、アイスクリーム、バターなどの乳製品が楽しめる、まるで北海道のようなところです。その他の特産物は、ビールとワイン。と聞けば、もう行くっきゃないでしょ?


今回の旅の目的はとにかく「紅葉」を見ることだったので、広大なウィスコンシン州の中で選んだ目的地は、ドア・カウンティ(Door County)。琵琶湖の何倍も巨大なミシガン湖の最北端のほうにある半島です。


ウィスコンシン州に関する情報は、日本のガイドブックはいうまでもなく、アメリカのガイドブックでも非常に少ないので、ひたすらインターネット情報が頼みの綱。といっても、ロサンゼルスのように、どこのホテルでもインターネット予約&決済できるような都市部ではないので、オンタイム予約はおろか、ホームページすらないような宿が多く、宿探しにはけっこう困りました。(結局電話であちこち問い合わせました)


宿泊したのはSturgeon Bay(スタージョン・ベイ)のBest Westernと、Sister BayのOpen Hearth Lodge。ドア・カウンティは上から下まで車で約45分程度の半島で、その中にFish Creek, Egg Harbor, Ephraimなどいくつもの小さな町があります。宿探しをする時に困ったのは、この中でどのエリアに宿をとったら良いかという点。こればかりは、行った事がないとその場所の雰囲気が分からないので、とりあえず宿が多そうなエリア(繁華街に近い)ということで選択しました。
実際に行ってみた感想は、Sturgeon Bayはドア・カウンティのメインの観光地からちょっと遠いので少し不便。その代わり、混んでいる時期も宿がとりやすく、ビジネスエリアなので、スーパーや銀行、郵便局もあるので便利。無難なのはレストランやお店が多いEgg Harbor、Fish Creek、Sister Bay、Ephraim。これらはそれぞれ近いのでどこに宿をとっても行き来に便利です。不便そうだけれど宿が安く、夏など混雑時にのんびりしたい時にはJacksonport、Ellison Bay、Gills Rockなど繁華街から離れたところが良いかもしれません*1

今回の旅で楽しかったのは、紅葉まっさかりのシーズンに行われた地元のお祭り「Pumpkin Patch Festival」。ロサンゼルス近郊でも似たようなお祭りはあちこちで開かれており、もっと規模も大きいのですが、やっぱり田舎の村人たちが力を合わせて作り上げたような素朴さがたまりません。ハロウィーンのディスプレイコンテストがあるため、村中のお店、ホテル、レストランなどがそれぞれ工夫を凝らした飾付けをしているのもなかなか楽しみです。村の人気パブ、Shipwrecked(難破船)の手作りビールを飲み、揚げたてのポテトチップ(この地方ではフレンチフライではなく、薄切りのポテトフライが人気)や、チーズカード(Cheese Curd)チーズを作る際にできる副産物。独特の感触と濃い味が特徴)のフライを屋台で買って食べ、のんびりした1日を過ごしました。


この地方の人気料理はなんといっても魚で湖で獲れたPerch(日本のスズキ?)のような白魚で、臭みがなくフライにして食べるととても美味しかったです。また、たまたま入ったカフェ、Blue Horse Bistro & Espressoで食べたビール入りのチーズスープも、ウィスコンシンならではの郷土料理で美味でした。


この他、絶対行って見たかったのに、たまたま定休日で入れなかった「PC Junction」というお店も次回ぜひ行ってみたい場所です。ここは、カウンター席をぐるり周回するミニチュア電車がハンバーガーなどの料理を運んでくるのが名物のお店で、なんと水曜〜日曜までの営業です。


ウィスコンシン州は、ヨーロッパからの移民が多く住んだ場所で、特にドア・カウンティには北欧の人が入植した土地です。そのため、北欧料理も名物です。一番人気は、Al Johnson's Swedish Restaurantという店で、屋根の上に牧草が敷いてあり、レストランの屋根の上でヤギを飼っているのがトレードマーク。ドア・カウンティに行ったらこの店に行かない人はいないというくらいの人気店で、常に大混雑。料理の味も大変満足行くものでした。


デザートで忘れてはいけないのは、この地方のチェリーを使ったチェリーパイ、そしてフローズン・カスタードと呼ばれる、アイスクリーム。Not Licked Yetというお店が有名で、牛乳ではなく地元の新鮮な濃〜いミルクを使っており、普通のアイスクリームより空気の含み方が多いのか、もっとふわっとした口ざわりです。毎日手作りした、新鮮なものしか売らないというのがウリで、大量生産のアイスクリームとは一線を画した美味しさです。


食べ物の話ばかり続いてしまいましたが、肝心の紅葉はというと…。
シカゴのオヘア空港から北上していったのですが、ミルウォーキーを過ぎた辺りから、どんどん紅葉が見えてきて、ちょうどドア・カウンティのあたりが紅葉度80%という感じでした。たぶんあと1週間遅かったら、100%のピークだったでしょうね。


ペニンシュラ州立公園というところが紅葉の名所と聞いていったのですが、別にここに行かなくても、もう半島全体が紅葉できれいでした。公園自体は、湖の冷た〜い風が吹きすさぶところにあり、あまりの寒さに(10月2週目です)長居できませんでした。夏はハイキングしたり、レンタサイクルで公園内をめぐるのが人気のようです。


この半島には、42、57号線という大きな道が走っているのですが、それ以外のローカルの人が主に通るような道をドライブすると良いと聞いたので、あちこち走ってみました。すると、見えてきたのは、ここに住んでいる人たちの生の姿。犬を連れて歩いているおじいさんは、手を振って挨拶してくれるし、道路沿いにはいくつもの牧場があり、牛や馬がのんびりと草をはんでいる姿が見えます。100年くらい前からあるような古いファームハウスは、いずれも赤いペンキで塗られ、絵ハガキのような美しさです。1つの家からもう1つの家まで車で5〜10分という感じで、まさに田舎のゆったりした暮らしぶりです。


ウィスコンシン州は、「あらいぐまラスカル」(世界名作劇場)の作者の故郷としても知られているところですが、昔の農場の暮らしが今も脈々と続いている、そんな感じを垣間見ることが出来ます。


今回の旅は3歳の子供たちも含めた家族旅行だったのですが、うちの子たちが一番喜んだのは、The Farmという観光農場。といっても、田舎のことですから、個人の農家が本業の合間に手作りで作ったような感じで、豚、山羊、鶏などの家畜にボトルのミルクをあげたり、コーンのエサをやることができます。こんなこと、地元の子供たちにとっては、アタリマエの日常生活なんですが、都市部から来た子供には珍しいことなので、シカゴなど近郊の都市から観光でやってきた人に人気の場所です。


ウィスコンシン州を旅してみて感じたのは、やっぱり田舎はいいなぁ〜ということ。いつも隣の騒音が聞こえてくるようなロサンゼルスとは大違いで、緑も豊か、人ものんびり、乳製品が美味しく、物価も安い。ドア・カウンティには、スターバックスなど大手資本の店がなく、地元のコーヒーショップがあるのみ。そういうのいいなぁ〜って思いました。でも1つだけ困ったのは、アジア人が少ない地域なので、子供にじぃ〜って見られること。差別どうこうっていうのではなく、あんまり見たことがない人種なので、思わず観察してみたくなるんでしょうね。アジア系が多いロサンゼルスではあり得ないことなので、久々に「私ってガイジンなんだ」と実感してしまいました。


*1:たんなる旅行記なんですが、あまりにこの地域の情報が少なく、私自身も情報集めに苦労したため、今後ドア・カウンティを旅行される方の参考になればと思ってちょっとデータ的なことも含め長々と書いてみました。ウィスコンシン州で本当にマイナーですね。素晴らしい場所なのに、ガイドブックでも、ミルウォーキー、マディソンくらいしか扱っておらず、とても残念です。ちなみにウィスコンシン州は、「大草原の小さな家」のモデルとなった地としても有名。また世界的に有名な建築家、フランク・ロイド・ライトの故郷であり、彼が残した建築学校、タリアセンも有名です。