いよいよ明日で、私が1年3ヶ月働いた某ドメイン会社を退職する。
思い起こせば、約3年前、私は半年間「主婦」だった。
結婚を機に仕事を辞め、憧れの専業主婦になったのだが
いざ「毎日が日曜日」になってみると、ヒマを持て余して
しまい、気が狂いそうになっている自分がいた。
主婦友達がいればまだしも、アメリカに来て以来仕事が
すべてだったため、友達の数は非常に少なく、知り合いも皆働いている
人ばかりなので、昼間から私の愚痴に付き合って
くれそうな人は一人もいないのである。
アメリカにきて、これほど孤独を感じたことはなかった。
最初のうちは、一人で海に行ったり、カフェに行ったり
していたが、それも1ヶ月もすれば飽きる。
そして一番つらかったのは、「これからどうしよう」という将来への
展望が何もなかったことである。


それまで働いていた日系の雑誌社を辞めた後、私に何ができるか?
日本のメディアに対して、現地ライター・フォトグラファーと売り込む
こともできたが、そうやってくる仕事の量はたかがしれている。
そもそも雑誌でアメリカを取り上げる場合、1がNYでLAは多くの場合、
2番手でしかないのだ。
そんな中、私は迷った。一番やりたいのはライターだけれど、
アメリカでは日本にいた時のような仕事はとれない。
だったら、違うことをしてみてもいいんじゃないかと。
そして少しでも自分が興味があることをリストにしてみた。
グラフィックデザイン、カウンセラー、パラリーガル、ウェブデザイン。
そして手近なところで、グラフィックデザインとウェブデザインを
カレッジで習うことにした。
私が最初にとったのは、PHOTOSHOPのクラスだったが、このソフトは
デザイナーではなくでも、今のアメリカの会社ではいろんな場面で
使用されているので、クラスできっちり習っておいたことは、
後で予想以上に役立った。

その後、夫がインターネット会社で働いていたこともあり、また
当時インターネットが花形業界だったため、とりあえず
コンテンツライターとして、韓国系ポータルサイトにもぐりこんだ。
できればコンテンツ制作→ウェブデザイナー→プロデューサー→ディレクター
になりたいなと思っていて、事実それを書いたものが今も
自宅のコンピュータの前に張ってある。今見ると非常に感慨深い。

ここの会社は、結局半年で経営不振になった。
しかし、ライターのはずで雇われた会社で、日本語サイト立ち上げに
かかわることになり、1日12時間労働で頑張った。
これがきっかけで、当初はまったく予想をしていなかった
英→日のウェブローカライゼーションの道に進むことになってしまった。

この韓国系企業は、マネージメントの半分が7割が韓国人で3割が中国人。
そしてこの2つの勢力が常に戦いあっているような状態で、非常に
雰囲気が悪かった。本当は日系企業で働きたかったのだが、
日系は規模が小さく、給料が異様に低いので、次の転職のターゲットは
アメリカ企業のみに的を絞った。
そして見つけたのが今の会社で、夫の元同僚の紹介もあって
面接即決という状態だった。

この会社は、バナー広告が唯一の収入源というポータルサイトと異なり、
売るのはドメイン。しかもただのディストリビューターではなく、ドメイン
権利を持っている会社だったので、当時は「今IPOで収益を出せる数少ない
会社の1つ」と言われていた。経営は悪くはなかったものの、会社設立後
2年を待たずにして、大手のIT会社に買収となった。
この会社は私にとっての、初めての「純アメリカ企業就職」だったわけで
とにかくいろんなことを学ばせてもらった。最初の8ヶ月、日本人は
たった一人だったため、嫌でも英語は上達したと思う。
韓国人やドイツ人の同僚の英語が上手かったため、負けないように
頑張るという意地もこれに貢献したはずだ。
ここでは、ローカライゼーションのプロデューサーとして雇われたが、
PR、マーケティング、アカウントマネージメント、カスタマーケアと
実にいろいろなことに関わった。英語ではこれをcross-functional
responsibilitiesというけれど、まさにあれこれやった感じ。
面倒くさいことも多かったけれど、経験を積んだという意味では、
本当にいい環境だった。(転職の際に、応募企業に合わせて
業務経験をいろいろ書き換えられる!)

次の会社は…これは来月以降、山ほど書くことになると思うので
ここでは省くけれど、アイデンティティを喪失した主婦から
たった2年でプロダクトマネージャになれるのが、職歴1年を3倍に
して数えるインターネット業界ならでは、だと思う。
これは通常、「5年以上の広告営業経験要」と書くところを
インターネット業界だと、始まったのがつい最近のことなので
せいぜい「2、3年」もあれば、そこそこのベテランと見なすからである。

ローカライゼーションの仕事自体、募集も少ないけれど
やってる人もそう多くはないので、過去2年で大手サイト3個を立ち上げた
私は、たぶんアメリカでも「超ベテラン」の部類に入る
のかもしれない(なんちゃって)。

明日はボスが同僚と一緒に、Napa Valley Grillという
会社のすぐそばにあるセレブ御用達のレストランに連れて行ってくれる
ことになっている。いつもジーンズの私も、明日はちょっときれいな
格好していかなくては!